extra

引き留められる話

「依央利くん、昨日もお話した通り、今日は飲み会があるからご飯大丈夫です!」
「はーい」

 色々な経緯があって凡人の身ながらこのカリスマハウスに仮住まいさせてもらっている私なのだが、今日は自分の勤める会社の飲み会に出席することになった。カリスマハウスのみなさんと食卓を囲まない日というのは、気付けば久しぶりだ。依央利君の美味しいご飯が食べられないのは本当に残念だけど、お付き合いだから仕方ない。なんだかんだでひと悶着の末、依央利くんも納得してくれた。

「飲み会?」

 ソファでくつろいでいたふみやくんが飲み会、の単語でこちらに振り向いた。

「うん。お酒も飲むよ、ちょっとだけだけどね」

「そういえば名前がお酒飲んでるところ見たことないかも」

 同じくソファで肩肘をついてくつろいでいるテラさんが、興味を引かれたようにぱっと顔を上げて話しかけてくれた。

「そうでしたっけ。私眠くなっちゃうんですよ。だから普段はあんまり飲まないんですけど」

「ふーん。じゃあ今度一緒に家で飲もうよ! 有象無象との飲み会なんかよりテラくんとの飲みの方がいいよね!」

「そ、それは確かにそうかも……」

 すごい表現するな、と思いながらも同意してしまう。テラさんは力強いな……。


 そんなことを話していると、ふみやくんにぎゅ、と手首を掴まれてまっすぐに見つめられる。

「お前、なんか流されそう」

「ど、どういう意味」

「こういうこと」

 そう言って立ち上がると、ふみやくんは私の手首を引っ張り引き寄せてくる。おまけに腰に手を回されてしっかり抱きしめられる。ふみやくんの胸元にむぎゅ、と耳が当たる。柔らかないい匂いが広がって、顔に熱が集まってくるのが分かる。

「ほら。こういうことされたらすぐドキドキする」「う……」

 それは相手がふみやくんだからであって……言えないけど。

「は〜い、いちゃつかないでくださ〜い」

 依央利くんからの声が飛んでくる。はっとしてふみやくんの胸板を押して「い、いちゃついてないよ!!!?」と抵抗の意を示した。


「名前、俺も行く」

 私の髪をひと撫でしながらなんでもないことのようにふみやくんは言う。

「ええっ!? 会社の飲み会だよ、」
「じゃあまっすぐ帰ってこい」
「上からだなあ。う〜ん。断れないかもしれないけど……考えてみるね」

 というところで出発の時間になり、その場はすんなり家を出ることに成功した。


 お昼、事前に飲み会の代金を集めるぞ、という段階になって。払おう、とお財布を開いたら丁度帰れる分のお金しか入ってなかった。ま、まさか……ふみやくん!?

「ああああああのすみません今日現金がなくてですねあの申し訳ないのですが今日の飲み会失礼させていただきます!!!!」

 勢いよく頭を下げる羽目になった(建て替えるよ~とは言ってもらえたが肩身が狭すぎるので辞退させていただいた)。

 その後しおれながらメッセンジャーアプリで今日はまっすぐ帰ります(ごはんください)と送ると、ふみやくんからはにっこりしたスタンプが返ってきた。帰ったらお金返してね……


221105 未出演の方々は二度寝してるということで 最後、依央利くんからははーい!とにっこりスタンプが飛んでくる 依央利くん、パンダのスタンプ使ってたらかわいいですね 一体何が……という話題になって実は財布のお金が……ということが明らかになったらテラくんが伊藤ふみやーーーーー!!!!!って怒ってくれると思う 天彦さんもふみやさん!って言ってくれると思う